邦題は相当にイケてないが、要するにルネ・ジラールの入門書である。彼はミメーシス(模倣)の理論を提唱した人物で、ピーター・ティールにも影響を与えたことで有名だ。自分もルネ・ジラールの本を探しているなかで出会ったのだが、このタイトルのせいで危うく見逃すところだった。
「人間は何を欲すればよいのかわからない生き物であり、決めるために他者を参照する」というのがこの理論の骨子である。この性質のためにひとは競争し、それを解消するためにスケープゴートを生み出す。ほとんど場合スケープゴートはなんでもよく、合理的な判断で対象が決まるわけではない。すぐに理解することは難しいが、たしかに数多くの物語や現実世界の争いがこの理論によって説明できる。
本書後半の対処法に関わるところは著者自身の経験に基づいて書かれていると思われる部分も多く、必ずしもルネ・ジラールの説明をしているわけではないと感じた。ただ彼の理論をより学びたいひとのために、この順番で著作を読むとよいという文献リストが巻末に載っている。その最初に記載されていたのが『欲望の現象学』なので、次はこれに挑戦してみようと思う。