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奇想の系譜

最終更新日: 2024 年 05 月 06 日

岩佐又兵衛、狩野雪山、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の 6 名の作品がまとめられている。まず思ったのは、『美術手帖』の記事としてこれが連載されていた 1968 年ごろ、彼らは「奇想」として捉えられていたということである。

2004 年のちくま学芸文庫版のあとがきにも「今やかれらは江戸時代絵画史上のスターであり、とりわけ伊藤若冲の人気上昇は異常なほどだ」とあるが、僕にとっても彼らはまさに江戸時代を代表する画家たちであって、ほんの半世紀前には「江戸のアヴァンギャルド」(本記事の副題)としてまとめられていたことなど知りもしなかった。というより、むしろこの本が時代をそう導いたらしい。

なかでも僕の目を引いたのは、国芳の『鬼若丸の鯉退治』だ。従来の 3 枚続きには独立しても鑑賞できるように描かれるのが大抵であったが、国芳はこれを 1 枚の画面として独創的な構図を展開したのだという。巨大な鯉とそれが生む大きな渦、実物でなくともその迫力に圧倒される。

(追記)まったく意図してはいなかったのだが、これを読んだ直後に「村上隆 もののけ 京都」を観に行ったところ、おどろくほどこの本に関する記述があった。自分の世代の人たちにはおそらくその実感はないのだけれども、やはりとてつもなく大きな影響を多方面に与えた本だと言ってよいのだろう。

  • Kuniyoshi Utagawa Oniwakamaru Fighting The Giant Carp, 19th century
    Kuniyoshi Utagawa Oniwakamaru Fighting The Giant Carp, 19th century