孟子
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貞観政要

最終更新日: 2023 年 12 月 31 日

全 10 巻 40 篇、すべてに解説と現代語訳と原文がついていて、とても読みやすい。基本は『論語』や『孟子』といった古典に則って議論が進められるため、これらを押さえてから読むとさらに学びも深くなると感じられた。

ただ個人的な話をすると、儒教というのはどうしてもすっと頭に入ってこない。読んだときにはなるほどと思うのだけれども、すぐに忘れてしまうのだ。これはひとつの仮説なのだが、儒教の論理は帰納的であることが圧倒的に多いからなのではないかと考えている。たとえば、本書にも以下のような議論がある。

仁・義・礼・智・信、この五つは人が常に守らなければならないことで、一つを欠いてもうまくはいきません。この五つの実行に努めれば、必ず益となるものです。殷の紂王はこの五つを馬鹿にしたので、周の武王に国を奪い取られました。項羽には、このうちの信がなかったため、漢の高祖劉邦に国を奪われました。
ひとつには単純に中国の歴史をどれだけ知っているかがあるだろう。この例で登場する人物たちは日本でも比較的有名だと思うが、紂王や武王などを知らなければ少なくとも後半部分はわからない。そして「項羽には信がなかったため劉邦に国を奪われました」と言われると最初そうかもなぁと思ってしまうが、段々とそんなに単純な話なのかなぁと考えはじめてしまう。文章が単純明快な分、読者には洞察力が求められる。もしかすると、漢文とはそうやって理解を深めてゆくべき性質のものなのかもしれない。