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詳解 マテリアルズインフォマティクス

最終更新日: 2024 年 02 月 23 日

化学の分野で機械学習がどのように活用されているのかを知りたくて読んだ。 Transformer を利用したモデルなども紹介されていて、 LLM からそこまで大きな技術的な隔たりはないように感じられた。また、自分の研究から近いところでいうと、「物性予測モデルによる材料探索」のところが勉強になった。

従来のスクリーニングには主に第一原理計算が用いられてきた(『新しい量子化学』などに詳しく書かれている)。しかしこの手法だと計算コストが高く、さらにおおよその結晶構造が既知である必要がある。これを克服するためにディープラーニングモデルが活躍され始めている。たとえば Ahmad らは CGCNN (Crystal Graph Convolutional Neural Network) を利用して、リチウムイオン電池においてデンドライト析出が起きにくい固体電解質の探索を試みた。

ただやはり課題もある。本書にも記載されていたが、データセットをどのように集めるかが非常に重要だ。たしかに Materials Project のような便利なプラットフォームも出てきてはいるものの、特に実験値を得るのには非常に時間がかかる。従来の第一原理計算の結果をうまく活用しながら深層学習に結びつけるというのが、ひとつの解決策であるように思った。

なお、この本には姉妹書として『事例でわかる マテリアルズインフォマティクス』がある。