わかりやすくてとてもよかった。特に統計学と因果推論との関係性というか、ある種の強い仮定によって質的な議論がどのように削ぎ落とされて一般化されうるのか、というところが理解できたように思う。たとえば、ある散布図の分析において、以下のような記述がなされている。
気をつけてほしいのは、この回帰係数は真の因果効果からはものすごくズレてしまっている一方で、 p 値は p = 0.002 であり、統計的には 1% 水準でも有意になっていることです。これは、その回帰係数が「統計的に有意である」ことと「因果効果に対するバイアスのない推定値である」ことはまったく別の問題であることを端的に表しています。僕だったら、自分が熱心に証明したいと思っていた仮説の分析結果が「統計的に有意である」ならば、「バイアスのない推定値である」ことの検証などすっかり忘れてしまいそうなところだ。『論文の書き方』でも少し触れたが、最近社会・人文系の研究への理解が多少なりとも深まっている感覚があるので、ぜひこれは続けてゆきたいと思う。