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わかりやすい量子力学入門

最終更新日: 2023 年 12 月 30 日

九州大学名誉教授の高田健次郎が公開している『ミクロの世界 - その 1 - (原子の世界の謎)』『ミクロの世界 - その 2 - (量子力学入門)』をまとめたもの。 Web 版にはない演習問題とその略解も載せてある。もちろん数式は出てくるが、難しい証明などはほぼ省略されているので理工系の大学を目指す高校生でも読めると思う。特に量子力学がなぜ必要だったのかというのを古典力学から丁寧に説明しているのがすばらしい。

思い返してみると、僕が大学 1 年生のとき、おそらく多くの理工系の学部がそうであるように数学と物理と化学が必修科目だった。物理では古典力学、すなわちニュートン力学とマクスウェルの電磁気学を 1 年かけて学ぶのだが、なんと化学の方でいきなりシュレディンガー方程式が登場する。こんな難しい理論だれも理解できないだろうと思ってなにも勉強せずに試験を受けたら、なぜか僕だけがこれを落とした。翌年ようやく物理学科としての必修科目で量子力学が出てきたおかげでなんとか再履修の化学も単位を取ることができたのだが、もし物理学科に進んでいなかったら留年していたかもしれない(そもそも物理学科に進学する学生がシュレディンガー方程式を扱う化学を落とすなという話もあるが)。

それほどまでのインパクトを持つシュレディンガー方程式。この本を読むとこの理論が生まれてきた背景がよくわかる。ノーベル物理学賞も受賞したファインマンの有名な言葉に「I think I can safely say that nobody understands quantum mechanics. (量子力学を理解している人なんていないと言っていいだろう。)」というのものがあるが、これだけ直観に反する理論を一般の学生がいきなり理解することはほとんど不可能だろう。この本は、それでもこれがなければどうしてもミクロの世界は記述できなかったのだということを認識させてくれる良書だと思う。