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アートは資本主義の行方を予言する

最終更新日: 2023 年 12 月 29 日

経済学の話をしていたらこの本を紹介された。東京画廊のオーナーの著作である。アートと資本主義との関係について主に述べられているのは最初の第 1 章だけで、以降は東京画廊と日本の現代アートの歴史を紹介する内容となっている。どちらかと言えば、グローバルにおいて美術がどのように捉えられているかが本書の全体を流れるテーマである。

「有用性がない」 = 「使用価値がない」からこそ自由に創作ができるというのは、どこかで聞いたことのあるような内容だなぁとは思いつつ、納得のできる主張である。まわりの人と価値を共有できる作品を提供するという意味で、作家は売れるものを作らなければならないというのも、よい意味で画廊(本人はキュレーターとしての役割を担っていると述べている)らしい発言であると感じた。

ただし、「アートは資本主義の行方を予言する」と言えるほどの論拠が示されているわけではないので、そこは注意が必要だ。資本主義の閉塞感を打ち破る力がアートにはある、くらいの意味合いで捉えるのがよいだろう。美術と資本主義については経済学者の水野和夫との共著『コレクションと資本主義』の方でより詳しく述べられていると聞いたので、機会があったら目を通してみたい。