第 3 部ではいよいよドミートリーの予審が行われる。昔読んだときに知ったはずの結末を完全に忘れてしまっていたこともあり、特に後半の臨場感には舌を巻いた。
結論ありきの事情聴取と、それを感情的に否定する容疑者。たしかに彼の素行は悪い。しかし冷静に第 3 者の視点でこのやり取りを眺めてみると、彼の犯行を決定づけるほどの証拠もない。それにも関わらず、群衆のなかにある、理性の仮面をかぶったなにかが彼を追い詰める。現実世界でも見られるこの不気味さを、見事に描き出していると思った。
さて、第 2 部と第 3 部において兄弟それぞれの視点で進行していた物語が、第 4 部で終結に向かってゆく。この作品について語られるときに必ず出てくる言葉、「犯人は誰なのか」。結局自分もそのことをずっと考えながら読み続けている。