『コーヒーの科学』を書いた著者による本。エチオピアからイスラーム圏、ヨーロッパ、そして新世界へとコーヒーが広まってゆく様子は、まさに人類の歴史を概観している感があった。消費側のみならず生産側の視点で描かれているのもよかった。
個人的に一番興味を持ったのは現代の潮流で、サードウェーブやフェアトレード、スペシャルティコーヒーの起源がおぼろげながらもつかむことができた。ワインやコーヒーは統一された規格や組織が少なく、体系的に学ぶのも難しいなと感じた時期もあったが、嗜好品の歴史を考えればそれも当然のことである。むしろ経済 / 技術 / 文化 / 地理といった様々な条件から生み出される現在の事象を、読み解いてゆくことにこそ意味がある。
日ごろ飲んでいるコーヒーの産地のことが少しでもイメージできるようになったことはよかったと思う。僕も生豆から焙煎して家でコーヒーを飲んでいるが、その楽しみがさらにひとつ増えたのでうれしい。