前半はたしかに「エネルギーをめぐる旅」をしているような気持ちになったが、後半は表層的な知識がただ並べられているだけだった。とはいえ、自分もエネルギーに関することを全然知らなかったのだなぁと感じた箇所がいくつかある。そのひとつがジェヴォンズのパラドクスだ。
燃料の経済的な利用が消費の減少と同義であると仮定するのは、全くもって発想が混乱している。まさしくその正反対が真実なのだ。多くの類似の事例に認められる原則によれば、新たな状態に移行した経済は、原則としてエネルギー消費量を増やすほうへと向かうのであるこれはジェヴォンズが『石炭問題』のなかで指摘したものである。石炭の例もそうだが、エネルギーの歴史を学んでいると、つねに資源の枯渇が問題とされ続けてきたことがわかる。ある意味でそれは有史以来、科学技術によって克服されてきたと見ることができるかもしれない。しかし、気候変動等の問題が避けられない局面になってきているいま、僕らはなにをなすべきなのか。それを考えるきっかけを与えてくれる本だった。