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若い読者のためのアメリカ史

最終更新日: 2023 年 12 月 30 日

ご存知のとおり、コロンブスによる大陸発見(1492 年)を起点にするとアメリカの歴史は 500 年程度に過ぎないが、だからこそ私たちの生きる現在に至るまでの流れが非常にクリアに見えてくると思った。独立戦争や南北戦争などによって、アメリカの自由と平等は完全なものになったかと言われれば、答えは間違いなく No だろう。つい最近もイェ(カニエ・ウェスト)が人種差別的発言を繰り返している。

私のなかでは、特に戦後のアメリカ史は音楽と深く結びついている。例えば、昔何度も聞いたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「I Have a Dream」の演説(1963 年)は過去の歴史として認識されているが、同じく何度も聴いたビル・エヴァンスのヴィレッジヴァンガードでの伝説的なライブはそれより前(1961 年)なのにそこまで昔のことのように思えない。なにが言いたいのかというと、半世紀前というのは案外昔のことではないのかもしれないということだ。

本書でも紹介されていた、レイチェル・カーソンの「現在は過去と未来とつながり、生きとし生けるものはそれを取り巻くすべてとつながっている」という言葉の重みは、アメリカ史を読んでいると特に強く感じる。差別や格差に関する問題だって、過去に様々な歴史があったけれども、現在も解決の過程のなかに私たちはいる。