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サミング・アップ

最終更新日: 2024 年 01 月 25 日

モームのエッセイであるが、『人間のしがらみ』などに見られるテーマがストレートに書いてあった。「人生には理由などなく、人生には意味などない。これが答えである。」

本書では人生 / 劇作 / 哲学など、様々な話題が特に脈絡もなく展開されている。ただやはり全体として感じられるのは、モームの観察の鋭さである。そしてそれがまた冒頭の言葉にもつながる。

人間を観察して私が最も感銘を受けたのは、首尾一貫性の欠如していることである。首尾一貫している人など私は一度も見たことがない。同じ人間の中にとうてい相容れないような諸性質が共存していて、それにも拘わらず、それらがもっともらしい調和を生み出している事実に、私はいつも驚いてきた。

これを読むと愕然とする。周りからはそう見られていないのにも関わらず、ひとは自分が首尾一貫していると思い込んでいることに。また、それが故に周りにも同じ姿勢を期待していることに。言葉にすると人間の本質がそんなところにあるだなんて滑稽に思えてくるが、よくよく考えてみると、やっぱり、みんな、そうである。

こうした主張が演繹的にではなく、徹底した人間観察から導き出されていることに意味があると思う。だからこそ、多くの共感を呼ぶのだろう。