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カイゼン・ジャーニー

最終更新日: 2024 年 04 月 28 日

ストーリーと解説を交互に並べながら、アジャイルを中心とした「越境する開発」について説明した本だ。物語はビジネス書によくあるような、主人公が周囲を巻き込み会社を変えてゆくという構成で読みやすかったが、あいだに入る説明はどうしても断片的な内容となってしまい、あまり頭には残らなかった。

自分も IT 業界に身をおいていたのでアジャイル開発には馴染みがあるのだが、一方でこういったスタイルはかなり特殊なのだな、と一歩引いて思うことがある。たとえばいまお手伝いしている会社ではプラント建設や環境問題にまでテーマが広がっていて、ここにソフトウェア開発の知見を安易に持ち込もうとするのは相当に危険である。結局のところ広く開発といったときの不確実性はいずれにしたってあるのだろうが、やはりハードウェアが絡むとなると容易には後戻りができない。

むしろ後者のような設計思想の方が歴史的には主流だったわけで、たとえソフトウェアの世界であっても、そう簡単にはひとは変われないのだろう。 IT の現場にいるとウォータフォールなんてと鼻で笑うような風潮もあるが、やはり業界の構造が最適な開発方法を規定すると言ってもよいと思う。そうであるとするならば、どんな領域であってもカイゼンの重要性は変わらない。