k.style

アエネーイス 下

最終更新日: 2024 年 03 月 23 日

上巻を読了してから 1 年も経ってしまったが、ようやく下巻も読むことができた。とはいえ印象は変わらず、ローマという国の偉大さをこれでもかというくらいに語ってくる。僕らが日露戦争の軍人たちに抱くようなある種の英雄像を、当時のローマ人たちはウェルギリウスの詩から得たりしていたのではないかと想像した。

ただよくよく考えてみると、ナショナリズムという概念が広く普及するよりもはるか昔の世界において、ローマという国がどのように捉えられていたかという疑問に対する回答は、実は自明ではない。為政者がこういった本によって自分たちを権威づけするようなことは古今東西どこにでもあっただろう。一方で、たとえばポエニ戦争に参加した人々は自分たちをどのような存在とみなしていたのだろうか。ナショナリズムと聞くと近現代的なものを想像してしまうのだけれども、それに近いなにかが、古代からずっと続いているようにも思われる。

やっとアエネーイスを読み終わったので、また改めて『神曲』の続きも楽しみたい。